4592 サンバイオ 

4592 サンバイオ

11月9日終値 7180円

再生細胞医薬品を開発するバイオベンチャー、サンバイオの株価が急騰劇を演じている。

時価総額は3000億円を超え 一躍、バイオベンチャーの最注目銘柄に躍り出た。

きっかけは11月1日に出された1件のリリース。開発中の細胞治療薬「SB623」
の国際共同治験(日米)2相で、主要評価項目を達成したと公表したのだ。

この治験では運動障害を伴う外傷性脳損傷(TBI)患者61人に同薬を投与。24週
間後に機能の改善度を示す一般的な指標が、薬を投与したグループで8.7ポイント改善
した(正常な状態を100とする)。対照群(薬を投与しなかったグループ)の2.4ポ
イントと比べ改善幅に差が現れた。

主要評価項目は、医薬品の治験をする際に、これをクリアすれば有効性が示せたという
指標だ。治験開始に先立って決めておくもので、プライマリーエンドポイントとも言う。
主要評価項目を達成することが治験の目標といってよく、達成できればおおむね問題なく
次の段階に進むことができる。

■2019年の早い時期に承認申請

主要評価項目を達成した意味は大きい。国内では治験3相は行わず、「再生医療等製品
に関する法律」に基づき、条件付き早期承認を目指すことができるからだ。同社は、20
19年の早い時期にも承認申請を行う見通し。アメリカでも「(条件付き承認に類似する
)新制度の活用を含めて検討し、1日も早い承認を目指す」(森敬太社長)。

条件付き早期承認制度は、2014年11月から始まった再生医療等製品を対象とする
新しい制度。安全性が確認された段階でいったん承認が下り、患者の治療を行いながらデ
ータを収集し、7年以内に本承認取得を目指す。世界に先駆けて日本で導入され、世界中
の再生細胞治療開発企業の注目を集めている。サンバイオ自身も、もともと日本人起業家
がアメリカで創設した会社だが、この制度の施行を見て日本に移転してきた経緯がある。

つまり、治験2相をクリアしたことで、サンバイオは脳細胞薬の実用化にぐっと近づい
たわけだ。

SB623はサンバイオの基幹となる開発製品で、TBIのほか慢性期脳梗塞でもアメ
リカで治験2相後期を実施中(大日本住友製薬と共同開発)。国内では今年2月、導出先
の帝人ファーマから開発権を取り戻した。

今後、加齢黄斑変性やパーキンソン病、脊髄損傷、アルツハイマーなど、脳神経、中枢
神経にかかわる幅広い疾患への適応も検討している。これまでの日米の治験で安全性には
問題がないとされていることから、適応拡大にあたっては有効性試験だけですみ、1つ承
認が取れれば次々に適応範囲が広がる可能性がある。認知症については創業科学者でもあ
る慶應大学医学部長の岡野栄之教授と共同研究を開始している。

■承認後に向けた製販態勢も着々と整備

細胞治療というと、患者本人の細胞を採取・培養し体内に戻す自家細胞が主流だが、S
B623は健康なドナーの骨髄液から採取した間葉系幹細胞を大量培養して製剤化する、
他家細胞(他人の細胞)による治療薬だ。自家細胞薬と異なり、量産・保存できるので待
ち時間なく治療を開始でき、コストを低く抑えられるメリットがある。他家細胞利用で難
しいとされる免疫適合の問題については、投与したSB623の細胞そのものはいずれ消
滅してしまうため、これまで大きな問題とはなっていない。

承認後に向けた製販態勢も着々と整えている。治験薬はアメリカの製造受託業者を使っ
ていたが、国内製造販売のために日立化成と提携。日立化成の米子会社と横浜の製造拠点
で技術移転を進めているところだ。

国内では自社販売の方針で、少しずつスタッフの採用も進めている。9月には適正使用
や普及、安全な流通態勢整備に向け、医薬営業支援のケアネットや医薬品商社のバイタル
ケーエスケーホールディングスなどと資本業務提携を結んでいる。

「TBIは現状、交通事故など1回の出来事による損傷を対象としているが、将来的に
はスポーツなどへの拡大も検討課題」と、森社長は意気込む。日本では再生医療というと
iPS細胞への注目度が高いが、実は体性幹細胞の実用化のほうが早い。すでに承認され
ているテルモのハートシートやJCRのテムセルも間葉系幹細胞など体細胞由来の製品だ

サンバイオはほかにも間葉系幹細胞を中心とした開発計画があるが、当面はSB623
の適応拡大が目白押しだ。今年4月に野村証券当てに発行した新株予約権はものの2カ月
で権利行使され、110億円を調達。目先の研究開発資金は十分にある。

当面はTBIでの条件付き承認の申請と取得がいつになるのかが焦点となる。2019
年はサンバイオにとって大きな転換点になりそうだ。

(株)東洋経済新報社より

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