NY株急落と米金利「逆イールド」、米市場関係者の見方

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38556490V01C18A2000000/

[12/5 6:17  日経電子版より]

4日、米株式市場でダウ工業株30週平均は前日比799ドル安と急落したほか、債券市場では一部の年限で期間の長い金利が短い金利を下回る「長短逆転(逆イールド)」が広がった。株式と債券の両市場関係者に相場の現状分析と今後の展望を聞いた。

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◎ミラー・タバックのマネージング・ディレクター、マシュー・マリー氏

4日の米株急落は過剰だ。3日に2年物と5年物の金利差が逆転し、損失を被ったヘッジファンドから株式の持ち高を手じまう動きが自動的に出たことが大きいのではないか。「逆イールド」が収益の打撃になる銀行株のほか、個別に悪材料の出た運輸株やハイテク株などの下げが大きくなったのも響いた。

短期的には売られすぎとはいえ、チャート上の重要な節目を突き抜けると一段の下げもあり得るため要注意だ。中小型株で構成する「ラッセル2000指数」は昨年11月以降の下値支持線になってきた1460近辺に接近してきた。これを明確に割り込むと印象はかなり悪い。S&P500種株価指数など大型株も連れて下値を探る展開になりかねない。

最近はアルゴリズムやプログラムに基づくコンピューター売買の売りが作動し、相場の下げがきつくなる傾向がある。底値を判断するのは極めて難しい。重要なのは、自分がきちんと理解し、長期的な展望が見込めると自信が持てる業界や銘柄を普段から選別しておくことだ。完全な底値で買いを入れるのは難しいとしても、機械的な売りで大きく下げた場面は絶好の買い場になる。

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◎ジョーンズ・トレーディングのチーフ・マーケット・ストラテジスト、マイク・オローク

米株式相場は10月に経験したような調整局面に再び入ったとみている。米景気拡大を見込んで株を買い続けていた投資家が、景気減速や米中貿易摩擦の長期化を新たに織り込み始めた。株価指数は短期的に5~10%下げてもおかしくない。

市場関係者は米国の10年債と2年債の利回り差が縮小しているのに神経をとがらせている。長短金利差が逆転する「逆イールド」になれば景気後退の予兆となるため、リスク回避目的の株売りにつながった。個人的には米雇用情勢の良好さなどから、景気後退(リセッション)が迫っているとはみていない。

とはいえ減税効果が薄れて来年から米経済成長は減速する可能性が高く、株式相場は一段の調整が必要とみる。

米中は1日の首脳会談で互いの追加制裁を90日猶予したが、トランプ米大統領は4日のツイッターへの投稿で中国に対し妥協しない方針を繰り返している。市場関係者の多くは「貿易摩擦の回避はかなり難しい」とみている。

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◎RWプレスプリッチのマネージング・ディレクター、ラリー・ミルスタイン氏

急速に長短金利差が縮小している背景には複数の要因がある。米連邦準備理事会(FRB)が12月と来年に複数回利上げするとの観測が短期債の金利を押し上げている。一方、物価上昇は加速しないとの見方が広がっているうえ、2019年には米経済成長が減速するとの観測が長期債の金利低下につながっている。

米中貿易摩擦を巡っては、米中首脳が「一時休戦」で合意したが、本格的な摩擦解消の合意が成立するかは不透明だ。米株式相場が大幅安となり、「質への逃避」で相対的に安全資産とされる長期債が買われやすい。株式相場の軟調が続けばこの地合いが続きそうだ。米10年債利回りは2.75%まで低下する可能性がある。

ただ、長短金利差の縮小や、金利が逆転する「逆イールド」が目先の景気後退を示しているとみなすのは早い。足元の米経済指標をみれば景気後退を迎えつつあるとは言い難い。FRBの利上げもあと2回程度と予想しており、利上げ観測による債券相場への影響も徐々に落ち着くだろう。

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◎米DAダビッドソンの債券部門バイス・プレジデント、メアリー・アン・ハーリー氏

米債券市場で長期金利と短期金利の差が縮まっているのは、景気減速への警戒感が強まる一方、米連邦準備理事会(FRB)は利上げを続けるとの見方が根強いためだ。10年債と2年債の利回り差は4日に0.1%程度に縮まっており、利回りが逆転する「逆イールド」が近く起きてもおかしくない。

最近は米住宅指標の悪化が目立ち、企業の設備投資も減速の兆しがみられる。原油安は世界経済の成長鈍化を映している可能性が高い。これらを考慮し、私は2019年の米利上げ回数の予想を3回から2回に引き下げた。今月18~19日の米連邦公開市場委員会(FOMC)後に示す参加者の19年の金利見通しも従来から切り下がる可能性は十分にある。

もっとも、長期金利の低下は株安によるリスク回避目的の米国債買いの影響が大きく出ており、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に照らすとやや行き過ぎ感がある。米労働市場は活況で、個人消費も減速はしているとはいえ良好だ。

景気後退とはほど遠い。今後3カ月の10年債利回りは3%前後、2年債利回りは2.75%程度を予想している。景気後退の心配をするのは19年後半からでいいだろう。

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